そりゃ確に部屋は広いし、一人で暮らすのは寂しいとは言った。
だけど…

同居人が男だなんて聞いてないッ!!



始まりはそう、一本の電話から。
休日の眠りを妨げるかのように朝の六時に鳴り響いた電話からすべてが始まった。




1.事のはじまりは一本の電話




「母さんたらっ…いきなり電話してきたと思ったら、何なの!」


母への文句を並べながら手早く部屋を片付けていく。
今はちょうど午前九時。
あと二時間でこの部屋に新しい住人がやってくる。


『秋ちゃんトコ部屋が余ってたわよねぇ?』
『は?そんなこと聞くために電話したの?』
『もちろん違うわよぉ。それで使ってない部屋あるの?ないの?』
『…あるけど』
『よかった!ないなんて言われたらどうしようかと思ったわぁ』
『なんなの?まさか母さん…引っ越してくる気!?』
『ママなわけないでしょ〜』
『じゃあ父さん…?』
『ブッブー!パパでもありません〜』
『じゃあ何なの』
『うふふー聞きたい??』
『…………切る』
『やだ!秋ちゃん冗談なのにぃ!』
『で、いったい何?』
『実はね、今日から秋ちゃんには二人暮らしをしてもらうことになりましたぁ』
『は?』
『あっこれはもう決定事項なので変更はできませーん』
『え?』
『十一時くらいにそっちに着くと思うからちゃんと綺麗にしておくのよぉ』


ブツッ


『………』


受話器を握りすぎてミシッという嫌な音がしたのは多分気のせいだ。


「だいたいあの歳であのしゃべり方はいい加減ヤバイでしょ!若作りも良いトコっ」


母への怒りから掃除をする手つきがしだいに激しくなっていく。


「名前も知らない、女か男かも分からない、それで同居なんてあり得ない!」


怒りが頂点に達したところで、


ピーンポーン…


「はぃっ……て、え、あ、あれ?まだ10:30じゃん。まさかもう来たとか…?」


ポケットに入れておいた携帯で時間を見るとまだ予定の時間まで30分もある。
普通は11時ちょうどか5分くらい遅れてくるのがマナーってものではないか。
先程の怒りも手伝って少々イライラしながら玄関へと向かう。


ピーンポーン


そうこうしている間に再びチャイムが鳴った。


「はいはいっ。どちらさま!?」


言い方がきつくなってしまったことは勘弁して欲しい。
(誰だってインターホンを二回も鳴らされたらイラッとするでしょう?一回で気がついてますから!って感じに)
けれど、そんな怒りも玄関先に立っていた彼を見た途端何処かに消え失せてしまった。


「はじめまして、三木神楽です」


にこり、と笑う彼。
思わずわたしは彼を凝視してしまうのだった。


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