結局こうなるんだ...。
4.洗い物係と食べるの専門
盛大な破壊音はお皿が割れた音。
部屋中にこだました悲鳴は、包丁で指を切った神楽ちゃんのもの。
「ちょっと指切っただけであんな大きな声で叫ばないでよ。もっと大きな怪我かと思っちゃった」
落ちる皿をつかもうとして持っていた包丁で指を切ってしまったらしい。
幸い傷は浅く、そんなに出血もしていなかったんだけど・・・。
「おれにとっては大怪我なんだよっ」
神楽ちゃんにとっては大怪我になるんだってさ。
もう呆れてものも言えないよ、わたし・・。
「はいはい...」
クルクルと神楽ちゃんの指に包帯を巻きながら、わたしは大きくため息をついた。
そして。
神楽ちゃんは料理全般できないことが判明し、わたしは楽を手に入れるどころか、むしろ楽とは縁遠くなってしまったような気がした。
結局わたしが苦労することになるんだ。
「もうわたしがご飯とか作るから。神楽ちゃん何かできることとかある?」
「・・・・・・・・・・・・・皿洗いなら、何とか・・」
長い沈黙の後、神楽ちゃんはそう答えたのだった。
* * *
ぐちゃぐちゃになったキッチンをなんとか片付け、夕ごはんが出来上がったころには7時前だった。
じゃんけんしたの五時過ぎくらいだったような...。
食事にありつけたころには、空腹というよりも精神的な疲れでふらふらの状態になっていた。
「不味くてもいっさいの補償はしないから...」
テーブルの上に並んだ夕食を見つめる神楽ちゃんにそう言って、「いただきます」の言葉とともにわたしは箸を持った。
そのあとで神楽ちゃんが小さな声で「・・・いただきます」と言うのを見て、そのへんはしっかりしてるんだなと失礼ではあるが思う。
「神楽ちゃん、これ後でちゃんと洗ってよ?」
「言われなくてもわかってる」
「働かざる者食うべからず、だからね?」
「だから・・・っ」
「ここでの郷は私だからね?」
「だからわかってるって何度も言わせるな!食事くらい静かに食わせろっ」
「・・・・・ごめん」
微妙な空気。
疲れすぎて神楽ちゃんに八つ当たりしてしまった。
最悪だ、わたし。
これ以降神楽ちゃんもわたしも口を開くことはなく、つけっぱなしのテレビから流れてくる笑い声がむなしく聞こえた。
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