『これ、あげる』

差しだされたシルバーリング。
彼がその指にはめていたもの。

『え……?』
『もう、キミが迷子にならないように。そして、またいつかキミと会えるように…』

開かれた手の中にシルバーリングが転がりおちた。

『お守りだからね、なくしちゃいけないよ?』
『うん!あ、でも、わたしお兄ちゃんにあげるもの、なんにももってない……』

小さな声に彼は柔らかく微笑む。

『そうだな…。じゃぁ、キミとまた会える日までに考えておくよ』

それでいいかな?
少女は顔いっぱいに笑みを浮かべて大きく頷いた。

『ありがとう、お兄ちゃん…!』
『どういたしまして、迷子のお姫さま』

そう言って微笑んだ彼は、駆け出そうとしていた小さな身体を引きよせて―――…


"また、会おう"


それは、まだ幼かったあの頃に交わした約束……。




キミと僕をつなげるものは、たった一つの指輪だけ…―――



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