「はい、これ」
ポン、と投げるようにして寄越されたものを燎は思わずポカンと見つめた。
その燎の表情に侑妃は居心地悪そうにして「何か文句あるの?」と訊ねる。
侑妃の問いに燎は意識をとり戻し、
「文句なんかあるわけないだろ。まさか侑妃からもらえるとは思ってなかったから驚いてんだよ」
「そ」
燎の手に乗るそれは、きれいにラッピングされた侑妃からのクリスマスプレゼント。
予想外の彼女からの贈り物に、燎も顔が緩むのを抑えきれないらしい。
はた目から見て喜んでいるのがよくわかる今の彼の様子を見て、侑妃も表情には出さないがほっと胸をなでおろした。
ついこの間の終業式。
華夜と柚夜とともにクリスマスプレゼントを買いに街へ繰り出し彼女らの意見を聞きながらあれやこれやと悩んだ苦労が報われた。
そんなことを思いながら侑妃は隣で燎がラッピングを解くのを眺める。
中身があらわになってくるにつれて心臓がドキドキと音を立て始めるのがわかった。
そして
「ネクタイピン?」
「いつもスーツ着てるし、使えるものがいいかなって…っ!」
燎のつぶやいた言葉が侑妃の緊張に拍車をかけた。
自分の吐く台詞がまるで言い訳めいているようで侑妃は思わず頭を抱えそうになる。
どうして燎のことでこんなに慌てなくちゃならないんだ。
そう考えるも答えはすでに自分の中に存在していて。
好き、だから、か…。
嫌われたくない。
そんな想いが燎に誘拐されてから5か月経った今侑妃の中に芽生えていた。
と、そんなことを考えていた時。
目の前の景色が急に変化し、何か温かいものが自分を包んだ。
「って、え!?何!?」
「侑妃…」
「何っどうした!?」
好きだと想っていた時に燎に抱き締められ侑妃の顔はボッと一気に赤く染まる。
腰と背中に腕を回され挙句の果てには肩口に頭を置かれて完全に侑妃にはなすすべもない。
「りょ、燎…!」
ただただ彼女は恥ずかしさの限界を越えて慌てふためくばかり。
そんな侑妃などお構いなしに燎は抱きしめる腕に更に力を込めた。
そしてポツリとつぶやく。
「どうしよ…すっげー嬉しい」
絶対大事にするから。
その言葉とともにぎゅうっと抱きしめられて、ついに侑妃も恥を投げ捨てた。
恐る恐ると言う表現がふさわしいだろうか、そっと燎の背中に腕をまわしてスーツのジャケットをシワにならない程度に掴む。
「…わたしも、嬉しかったから」
自分の首元でシャラ…、とネックレスが音を立てる。
そこにはもともと彼女の宝物である指輪と新たな指輪がチェーンにつながれて輝いていた。
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