「もしもし?」

『俺。お前明日暇か?』


翔兄からのいきなりの電話。
そしていきなりの質問。


「え?明日?暇だけどどうして?」

『お前この前俺の家の近くにあるオムライスの店に食べに行きたいって言ってただろ?』

「確かに言ったけど・・・」

『俺暇だし連れてってやる』

「え?今なんて言った?」


あまりにもいきなりなことで頭が回らなくて、
つい聞き返してしまった。


『だから、あの店に連れてってやるって言ったんだよ』


翔兄から誘われてあまりにも嬉しくて
頭の中が真っ白になり何を言っていいかわからなくなった。


「・・・・・・」

『・・・遥?』

「・・・え!?あぁ何!?」


翔兄の呼びかけに現実に戻される。


『何って・・・行くのか?それとも行かないのか?』

「行く!連れてって!!」


確かに私は翔兄にとって妹みたいなものかも知れないけど
この誘いはすごく嬉しい。
大好きな人と一緒に過ごせるのだから。


『じゃあ、11時半に○○駅の前で待ち合わせな』

「うん、わかった!」

『ん、じゃあ明日な』

「おやすみなさい!」

『おやすみ』


電話を切った後、私は明日のために服を選ぶ。
大学3年の翔兄と歩くんだから
少しは大人っぽく見えたい。
タンスの中から色々な服を出して色々あわせてみる。
何度もそれを繰り返しやっと決めた。
シフォンブラウスにニットボレロをあわせ
いつも大概パンツスタイルだからたまにはと思いミニスカートを選んだ。
そしてふと時計に目をやると短い針が1時を指していた。
びっくりして急いでベッドにもぐりこんだ。

翌朝少しでも大人っぽく見られるために
いつもより念をこめて準備をし、出かける。

電車に乗り待ち合わせの場所の駅に着くと翔兄がいた。
ベンチに座り、タバコを吸いながらぼーっとしていた。

どこからどう見ても翔兄は大人で、
私のちょっとした背伸びが馬鹿らしく思える。

そんなことを考えていると
翔兄がこちらに気づきタバコを消してこちらに歩いてきた。


「来たな、行くぞ」

「・・・うん」


こんなこと前からわかってたことなのに
なに今更落ち込んでるんだろう。
そんな自分が馬鹿みたいだ。

そんなことが頭の中でぐるぐる回ってるとき
いきなり翔兄に顔をのぞかれた。
思わず驚いて声を上げてしまった。


「うわ!」

「お前なーんか違うと思ったら化粧してるな?それと服装がいつもと違う」

「・・・やっぱり変だよね?」

「いやそういうのも似合ってる」

「え?」


予想もしていなかった言葉を聞き驚いてしまった。


「なんだよ・・・」

「いや翔兄からそんなこと言われるとは思わなくて・・・」

「俺はお前の中でどんなヤツなんだよ・・・」


翔兄は眉間にしわを寄せて考えこんでいる。
何かを考えるとき眉間にしわを寄せる癖が変わっていなくて
つい笑ってしまった。


「・・・?いきなりなんだ?」

「いやなんでもない!それより行こう?」

「・・・ああ」


そして私達は歩き出した。


少しでもあなたに追いつくために背伸びをした自分が
はじめにはすごく馬鹿らしく思えたけど、
こんなあなたを見ることが出来たから無駄じゃなかったって思えた。
たまには背伸びするのもいいよね?
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