「おいしかったー!!」

「だろ?」

「うん!!」


翔兄のお勧めのオムライスを食べ終わった。
本当においしくてなんだか笑顔になってしまう。
ただでさえ翔兄といることが出来て、嬉しくて笑顔になってしまうのに。
私自身、自分が末期症状かななんて思ってしまう。


「そういやお前に本借りてたよな?」

「そういや貸してたね」

「せっかくだし返すから俺の家寄って帰れ」

「え・・・あ、うん」


翔兄の家には何度か行ったことがある。
だからいちいち驚くことではないのだけれど、
今日はお店の前で別れると思っていたから驚いてしまった。


「別に今日無理なら今度返すけど?」

「え!?いや大丈夫!!」

「そうか。じゃあそろそろ出るぞ」

「はーい」


割り勘で良いって言ったのに
翔兄のおごりで会計を済ませて店を出た。


「割り勘で良いって言ったのに・・・!!」

「ばーか。5歳も下と割り勘できるわけないだろ?」


翔兄はまたそうやってまた子ども扱いする。
翔兄の中でやっぱり私は子どもなのかな。
ちょっとだけ切なくなって何も言えなくなった。
もともと翔兄は寡黙な人だからお互い会話もなく翔兄の家に着いた。


「コーヒーでも飲む?」

「あ・・・うん」


翔兄が2人分のコーヒーを持ってきて私に渡し、
私の隣の席に座った。


「ありがとう・・・」

「いーえ」


正直私は沈黙に耐えられない性格で何か話そうと思うのだけど
まったく何を話していいのかわからない。
いつもなら何も考えずに話すことが出来るのに、
さっきの翔兄の言葉の傷が私の頭の回転を鈍らせる。


「・・・お前なんかあったの?」


日頃沈黙が続いても
たまにしか自分から発言しない翔兄が沈黙を破り驚いてしまった。


「え・・・いや何もないけど、どうして?」

「なんかさっきから変だなと思って」


なんで気づいてほしくないときに気づかれてしまうのだろう。
そんな確信を突かれてしまったら感情が隠し切れない。
自然と涙が私の頬をつたった。


「え・・・どうした!?」

「いや・・・なんでもない」

「なんでもなかったら泣かないだろ?」


確かに翔兄の言ってることは正しい。
だからと言って理由なんて言えるはずがない。


「・・・翔兄には関係ない!!」


ああ、なんでこんなに私は素直じゃないんだろう。
言った後に後悔しても遅いことなんてわかっているのに。


「関係ないわけないだろ!!」


昔からほとんど本気で怒ったことのない翔兄を怒らせてしまった。
私は翔兄に圧倒されて黙り込んでしまう。


「泣いてて何が関係ないんだ?」

「・・・。」

「だいたい好きな女が泣いてて心配しないヤツがいるか!!」

「・・・え・・・?」


いきなりで頭が回らない。
今翔兄なんて言ったの・・・?


「あ・・・いやその・・・」


翔兄も自分の発言に驚いているみたい。


「まぁ・・・そういうことなんだよ」

「え・・・?」

「・・・だからお前のこと、好きなんだよ」


これは夢なのではないかと思って頬をつねってみたけど
ちゃんと痛みを感じた。


「信じてないな?」


そう言って笑ってる翔兄を見てたら、また涙が出てきた。


「うぅ・・・ひっく・・・ばかぁ・・・」

「え!?ごっごめん・・・」


何を思ったか翔兄は謝ってきた。
あたしがばかなんて言ったからかな?


「・・・私だってずっと・・・ずっと好きだったんだからね?」

「・・・へぇ」


そう言って翔兄は私に顔を見えないように外方を向いた。
それが翔兄の照れ隠しってことくらいわかってる。
そんな翔兄を見て私の口元は自然と微笑んだ。

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