10.それから二週間



あれから二週間。
わたしと神楽ちゃんの関係に変化はない。






関係には変化はないけど、ひとつだけ変わったことがある。
それは…


「散歩?神楽ちゃん」
「…そうだけど」


わたしに何を言われるかわかったらしく、神楽ちゃんは嫌そうに眉を寄せた。


「買い物よろしく」


ニッコリと笑って彼に買い物リストを無理やり持たせる。


「なんでいつも俺が行かないといけないんだよっ」
「だって神楽ちゃん、力持ちだしさー」


いいじゃん、行ってきてよ。
彼を見上げてそう言うと、何故か神楽ちゃんの顔が赤くなった。
どうしたんだ、少年。


「?大丈夫、神楽ちゃん?顔が赤いよ」
「ぅ、うるさいっ」


買って来ればいいんだろ!


「今度はお前が行けよ、秋」


赤くなった顔を誤魔化すように早口でそれだけを言うと、神楽ちゃんは家を出た。


「行ってらっしゃい〜」


たぶん彼は手を振るわたしの顔が赤かったことに気付いていないだろう。

そう、変わったことと言うのは、神楽ちゃんがわたしのことを名前で呼ぶようになったということ。
でも恥ずかしいのか、わたしの名前を口にする度に赤くなっている。
そんな姿がとても愛しく感じて、思わず顔が緩んでしまうんだけどね。


「一年かぁ…。楽しい年になりそう」


そして新たに発覚したこと。
なんと三木氏の出張期間は一年間だったのだ。
この事は神楽ちゃんも知らなかったらしく、わたしの母から聞かされた時に一緒に驚いたことは記憶に新しい。
その後で、国際電話で三木氏に文句を言っていた。
もちろん、初めて会った時と同じく、猫を被って。


「さて、掃除でもしますかっ」


大きく伸びをして、私も掃除に取り掛かるのだった。






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