お姫さまと3人の親友[3]



「と、言うことだから、もう入ってきてもいいわよ、3人とも」


きりえのその言葉の後、ゆっくりと部屋の入り口のドアが開いて


「よっ」
「ごめん、侑妃」
「侑妃ちゃんごめんね‥」


声をかけてくれる3人に侑妃は一言。


「うそ…」
「侑妃ちゃん、その髪…」


華夜の言葉にはっとする。
そうだ。今はヘアスプレーもカラコンもしていない。
つまり3人は侑妃の本当の姿を初めて目にしているのだ。


「……」
「ほら、侑妃。しっかりしなさい」


黙ったままの侑妃にきりえが厳しい声で言う。
そのあとで「大丈夫よ」と小声で付け足し、侑妃の背中をぽんと叩いた。


「えっと…これ、がホントの俺……わたし、なんだ」


うまく笑えているだろうか。
声が震えていることに気付いただろうか。
3人に何か言われる前に、と侑妃は言葉を続ける。


「ごめん…ずっと騙してて。今のこの姿が本当の”姫乃侑妃”…です…」


3人の目を見ることができなくてずっと俯いたままだった。
だから柚夜が立ち上がったことに侑妃は気がつかなかった。
ほっそりとした足が視界に入り侑妃は無意識のうちに顔をあげた。
その瞬間


――パシンッ


「っ…」
「柚夜!」
「言うのが遅いよ…っ」


叩かれた個所に手を当てる侑妃の目に飛び込んできたのは、目に大粒の涙をためた柚夜の姿。


「本当は私知ってたの。侑妃のほんとの姿」
「え…?」
「高1の時、合宿があったでしょ?その時、見たのよ。その髪と目の侑妃の姿を」


柚夜の、信じられない発言に侑妃は茫然と彼女を見つめる。


「私は侑妃が好きだよ?だから侑妃が秘密にしたいって言うんなら無理に聞き出そうとは思わない。」


でも、と柚夜は続けた。


「私はちゃんと、本当の侑妃が知りたいとずっと思ってた。大好きな友達だから、本当のことを知りたいって…ずっと思ってたんだよ?
でも言えなかった。侑妃の事傷つけたくなかったから。好きだからっ…大切だから聞けなかった…ッ!」



ぐさりと柚夜の言葉が侑妃の胸に突き刺さる。
自分は知らない間に彼らを傷つけていたのだ。
項垂れた侑妃に、涙をこぼす双子の姉の肩を抱いた華夜が静かな声で話しかけた。


「侑妃ちゃん。柚夜は嘘がつけない性格だって侑妃ちゃんも知ってるよね?」


質問の意図がみえず一瞬戸惑ったが侑妃はこくり、と頷く。


「なぜこの子がこんな風に泣いているか、侑妃ちゃんはわかる?」
「それは…」


それは、わたしが彼らをずっと騙し続けていたから。
けれど侑妃の答えに華夜は首を横にふった。


「違うよ。柚夜はね、悔しいんだよ。こういう形で、侑妃ちゃんが今まで私たちに隠してきたことを知りたくはなかったんだよ。ちゃんと侑妃ちゃんの口から全部聞きたかったから泣いてるんだよ」


だから、と華夜は続ける。


「侑妃ちゃん。きちんと私たちと向き合って。私たちの目を見て話して」


侑妃に甘えたがる、いつもの華夜ではない。
彼女の強い瞳に促されるかのように、侑妃は頷いた。





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