惚れた弱み



「俺はこんなにも大好きなのに・・・お前は俺のこと、好きじゃないの?」


突然直也がそんなことをいうものだから、
私は飲んでいたお茶が変なとこに入り、むせてしまった。





+ + + + +





それはほんの10分前のこと。

いつものように私の部屋に彼はやってきて、
いつものように私にべたついてきた。


「直也、重い」

「えー・・・いいじゃん」

「重いうえに、暑苦しいの。離れて」


私は飲みかけていたお茶を口に含んだ。
お茶はすっかり冷たさを失い、温くなっている。
そう思いながら飲み込んだ瞬間、


「俺はこんなにも大好きなのに・・・お前は俺のこと、好きじゃないの?」


という質問を受け今に至るのだ。


「いったい何をいいだすのよ!」

「だって・・・いっつも俺がべたべたしてるだけで、かなでからはなんもしてくれないし」


そう言いながらちょっとすねてる彼。
そんな彼を見て不覚にも可愛いだなんて思ってしまう私がいて。
つい、彼の唇にキスをして「好きよ」だなんて言ってしまった。
そんな私を、目を丸くしてみる彼。


「・・・これで満足?」


そしてちょっと不敵な笑みを浮かべて見せた。


「そんなんじゃ、満足できない」


するといきなり彼に唇を奪われてしまい、それはどんどん深いものへと変わっていく。
苦しくなって彼の胸板をたたくと、やっとそれから解放された。


「いきなり、何するのっ!」

「だってー・・・あんだけじゃ満足できない」

「・・・はー」


全く、この男は。
でも嫌いになるわけじゃなくて。
むしろその逆で。


「かなで」


名前を呼ばれて、先ほどの行為の続きが始まった。

何をされても許してしまう。
これが惚れた弱みってやつなのかもしれない。





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