05.甘えて、甘えられて



翔兄はいつも私に優しくてわたしもつい甘えてしまう。
だけど甘えてばかりでいいの・・・?


今日は翔兄が自宅に帰ってきていて翔兄に呼び出されたので
杉崎家に遊びに行った。
隣だし小さい頃から家族ぐるみで仲がよかったから
頻繁に遊びに行っていたので今更緊張することはないけど
なぜだか緊張してしまう。
それはお互いの関係が変わってしまったから?

ドアチャイムを鳴らすと
「はーい」という声とともにおばさんが出てきた。


「あら遥ちゃん、いらっしゃい!!」

「こんにちは!!」

「どうぞ上がって!翔平ー!!遥ちゃん来たわよー!!」


おばさんが呼ぶと2階からから翔兄がやって来た。


「いらっしゃい、遥」

「遥ちゃんまた美人になったと思わない?もしかして彼氏出来た?」


そんなおばさんの何気ない一言にドキッとした。


「えーっと・・・そのー」

「俺だよ、遥の彼氏」

「「え?」」


私とおばさんの声が重なった。
それは翔兄の言葉に2人とも驚いてしまったから。


「遥ちゃん、それ本当?」

「えっと・・・はい」


ついおばさんの顔色を窺ってしまう。
するとおばさんの顔は一気に笑顔になった。


「きゃー!!本当なのね!?おばさん嬉しい!!」

「・・・母さん騒ぎすぎ」

「だってそうじゃない!!遥ちゃんが翔平の彼女なんて勿体無いわー。」

「いやいやそれはこっちですよー!!」

「そんなことないわよー!!」

「そんなことありますよー!!」


そんな会話がくり返される。
永遠と続きそうな気がしたのか翔兄が止めに入った。


「はいはい、そこら辺にしていい加減遥上げたら?」

「そうだったわ!どうぞ!!」

「お邪魔します」


おばさんが笑顔で「どうぞごゆっくり!!」と言うと
翔兄が不機嫌そうに「・・・うるさい」って反論してた。

階段を上り翔兄の部屋に入ると
そこは相変わらずすっきりしていて大人っぽさを感じる。


「座りなよ」

「あ、うん」


ソファーに座ると目の前のテーブルの上には
パソコンと何冊か本が置かれていた。


「レポートか何か?」

「うん。結構あるから飯とか自分でやると時間とられるし帰ってきたんだ」


たとえ翔兄に呼ばれたからといって
そんな忙しいのに私はきてよかったのだろうか?


「・・・別に俺が呼んだんだし気にするなよ」


どうやら翔兄は私の思っていたことを読み取ったらしい。
そんな顔に出てたかな・・・?


「いいの?」

「うん」


そう言いながら翔兄は私の隣に座った。
そっと翔兄の顔をのぞくと確かに疲れているようだ。
すると翔兄の頭が私の肩にもたれかかってきて少し驚いてしまった。


「・・・翔兄?」

「・・・少しだけこうさせて」


その声を聞くとどうやら本当に疲れているらしい。
いつもの翔兄は誰にも本当の自分を見せなくて
たとえ疲れていても誰にも疲れているそぶりなんて見せない。
でも今翔兄は私に甘えてる。
それは今まで見たことのない翔兄の姿だった。

翔兄の彼女になって今までとほとんど変わった事なんてなかった。
けど、今翔兄はわたしにありのままの自分を見せてくれている気がする。
今私は翔兄の支えになれているのかもしれない。
そう考えるとなんだか嬉しくなった。





→06背中が遠すぎる



inserted by FC2 system