06.背中が遠すぎる



学校の特別な休みの日、私は本屋に行くために電車に乗り込んだ。

たかが本屋のために
電車に乗ってまで行くのは変かもしれないけど
その本屋は大きくて本の数も多くあるので
至急必要な本でない限りはその本屋でと決めている。

でもその日はそれは間違いだったのかもしれない。



目的の駅に電車が着き、下車して本屋に向かった。
何度もこの場所には来ているから
特に考えることもなく歩く。

この地区には大きな大学があり、大学生であろう人たちが
多く、道を歩いていたりお店にいたりする。
その大きな大学に翔兄は通っているので
心の中で翔兄に会えないだろうかなんて期待している自分がいた。

そんなことを思いながら歩いていると
まさしく今考えていた人物、翔兄が前方を歩いていた。

でも翔兄は一人じゃなかった。
翔兄の隣には横顔しか見えないけど
すごく大人っぽくて綺麗な女の人がいた。
そんな2人の姿はすごく絵になって
誰が見ても理想だと思える彼氏と彼女のよう。

以前も感じた翔兄の大人っぽさ。

昔から私が見てきた翔兄は大人だったけど
ここ最近は本当に大人の男になって。

でも以前感じたのは本当はその大人っぽさじゃなくて
私の知らない翔兄の姿だったんだ。

そんな翔兄の背中がすごく遠く感じ
私の胸は痛んだ。

気づいたら来た道を走りながら戻っていて
私の頬には涙が伝っていた。






→07劣等感を刺激されて



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