08.一緒にいるのが怖くなる



メロディーが鳴り続けている中、
私は出ようか出まいか迷っていたのだが、
結局その電話に出た。


「・・・もしもし?」


何とかいつもの声を出すことが出来て、ほっとした。


『俺だけど、明後日なんか用ある?』

「特にないけど・・・」

『よかったら、どこか出かけないか?』


その問い掛けに戸惑ってしまう。

もし私がただの遊びならどうして誘ったりするのだろう。
これも私をからかって楽しんでいるのだろうか。

そんなことばかりが頭をよぎる。
でもこうして悩んでいても仕方がない。


「良いよ」


意を決して私は翔兄の誘いを受けた。



+ + + + +



約束の日になり翔兄が私を迎えに来た。


「今日はどこに行くの?」

「そうだな・・・買い物でもするか?」

「あ、本屋行っていい?」


この前はあんなことがあって結局行けなかったからどうしても行きたくて。
でも自ら言っておきながら行きたくないって思っている自分がいて。
私の中は矛盾だらけだった。


「本屋ってお前がよく行く?」

「そう、翔兄の学校の近くの。だめ・・・かな?」

「いや別にいいよ」


私たちは電車に乗り込み目的の駅に着いた。
駅を出ていつもの道を歩くと、この前の光景が脳裏によぎる。

その瞬間、翔兄と一緒にいるのが怖くなった。


「翔兄は私を騙してるの?」


気が付くと私はそんなことを口走っていて、
同時に私の頬に涙が伝っていた。

翔兄はそんな私を驚きの目で見つめている。


「ごめんッ・・・!!」


私はその場にいることが怖くなり逃げ出した。


「待て、遥!!」


翔兄の私を呼ぶ声が聞こえたけれど、
私は足を止めずに走り続けた。
翔兄に面と向き合って本当のことを聞くのが、
どうしようもないくらい怖かったんだ。

耳に入ってくる町の人たちの声が
私をあざ笑っているような気がした。





→09ずっとこのままでいたい



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